浅き夢見し(7)小さなサーマル

 日本は豊葦原の瑞穂の国である。平地という平地は耕され、なみなみと水をたたえた田が広がり、燦燦と降り注ぐ陽の光を受け止める。水は温み、稲はその英気を吸い上げる。上昇気流となって舞い上がる余裕は生まれない。
それでもわずかに露出した大地があって、小さなサーマルを生む。だから雄大なソアリングを思わなくてもいいではないか。小さなサーマルに戯れるソアリングで腹を括ろう。世界と競い合うのでなければ気がすまないのは、あの人たちに任せよう。

サーマルの強さ

 ものの本によれば、サーマルの強さは雲底高度と関係がある。目安の式は次のようだ。

    サーマルの強さ(ノット)≒0.004×H-1

Hは雲底高度(m)である。毎日の雲底を測定することはできないので、これまた推定をすることにした。したがっていくつも推定を重ねているから誤差も大きくなるが、当たらずといえど遠からずであろう。
富士山頂の天気、越谷と「さいたまの」の天気、足りないところは熊谷の天気を加え、関宿の雲底を推測した。そしてのサーマルの強さである。


うまいことサーマルに当たり、芯を捉えてソアリングできたらたぶん表のようになるだろう。半分がいいところと考えるならば、そのような見方になる。たぶん弱いサーマルでは、そんなところではないだろうか。
さて0.9以下のサーマルは29%、半分しか捉えられないとすると1.9以下が問題になるけれど、その確率は57%にもなっている。してみると、いかに芯を捉えるかが問題だ。
サーマルは中心に近いほど上昇気流は強い。芯を捉えることとなるべく小さな半径で旋回できることが大切である。そのためには失速速度が小さいほどいい。
世の中そう都合よく問屋は卸さない。失速速度が遅ければ巡航速度も遅くなって、風に弱いグライダーが出来上がる。仕方がない、風の強い日は諦めよう。

ガネット

 ガネットは自重75kg、スパン13.5m全長5.5m翼面積は12.7㎡、滑空比25+、最小沈下率0.7m-、失速速度40km/hで超過禁止速度120km/h。いかにも低速で旋回し、小さいサーマルでも浮かんでいられそうである。


 全スパンにわたってフラッペロンがあり、ネガティブにすれば少しは巡航性能も良くなるのではないかと思っている。それでも普通のグライダーに及ぶべくもないだろうが、まあシルバーには相応だ。
ガネットにはMGがあって、しかも電動で電源はリチュウム電池だという。ハイテク日本だ。獲得高度は300mくらいと試算されている。空域を研究すれば夢も手の届かぬことではない。これまたシルバー向けの研究テーマにふさわしい。

 MGで自力発航ができれば週日運航ができる。軽くて小さいからシルバーでもハンドリングができ、気象を読んで颯爽と飛び、気侭に滞空して空を楽しむ。これぞシルバー・スコードロン最適の道具ではないか。

>>浅き夢見しへ戻る>>