浅き夢見し(6)

夢未練

 寝耳に水、クラブの経済が破綻しあわや空中分解の運命になった。なぜそんなことになったのか、突然聞かされても解決の良案などあるはずは無い。
ウームと考えた。老人が拠って立つのはクラブである。クラブが無くなればシルバーも無くなるしULGの同志も無い。こりゃあ運命だ。ハラを括らなければならぬ。
山中鹿之助は言った、中秋の名月に向かって言った。「神よ我に七難八苦を与え給え!」 苦しくなれば元気が出るのが性分だ。負けてタマルか!
だがオレひとりより、皆が飛べる算段が大事だと思う。せっかくのヘソクリもウタカタとなり、かくてひとまずULGは老人の浅き夢。

拾う神

 ULGスパロウ・ホークは買えぬこととなった。ところが世の中よくしたもので捨てる神あれば拾う神もいる。ひそかに新しいジャンルのグライダーを作ろうとしている日本人がいた。文通して意気に感じ、開発中のULGを特別価格で提供してもらえそうである。
この人、はなはだ古めかしい言い草だが、今風に言うベンチャーよりも重厚なのだ。グライダーのセオリーに精通し一家言がある。膝前に太刀を引き寄せ静かに正座している雰囲気だ。サムライがふさわしい。
ただ作ろうとしているグライダーがバンジー発航の初級グライダー。フット・ランチも可能にしたいという。胴体しかできていないのだが名前はもうあってガネット。名付け親は日大の木村秀正教授。そう、彼の人は木村教授の弟子なのである。
ガネットがユニークなのは全長が短いこと。ワンボックス・カーの背中に乗せて運べるというのが目の付け所なのだ。何かと制約の多いトレーラーを不用にしたいと思っている。したがって翼は2ピース。だが強度は心配ないという。そして軽いこと。
ガネットは「マイ・グライダー」の主張があり自重75kg、スパン13.5m全長5.5m翼面積は12.7㎡、滑空比25+、最小沈下率0.7m-、失速速度40km/hで超過禁止速度120km/h。いかにも低速で旋回し、小さいサーマルでも浮かんでいられそうである。性能は普通のグライダー・マンには物足りないだろうが、シルバーにはふさわしい。しかも軽くていかにも老人向き。
さて嬉しくなったのはよいが、ウインチ発航できないという。ジャンプだけでは困る。たとえシルバーといえど、それなりのサーマリングはしたい。せめて300mは上がれないと様にならない。なんとかガネット頑張ってくれ。

ULMG(ウルトラ・ライト・モーター・グライダー)

 世界を見ればULMGというジャンルがあって、ガネットもMGタイプはそれを狙っているという。MG!! 次々と夢が飛び出して来るのが素晴らしい。
しかもガネットMGは電動で電源はリチュウム電池。ハイテク日本だ。獲得高度は300mくらいと試算されている。100mまで直進し、残った200mで最初のサーマルをゲットできればシメタものだ。空域を研究すれば手の届かぬことではないだろう。これまたシルバー向けの研究テーマにふさわしい。
MGで自力発航ができれば週日運航ができる。軽くて小さいからシルバーでもハンドリング(保管・運搬・メンテナンス)でき、気象を読んで颯爽と飛び、気侭に滞空して空を楽しむ。これぞシルバー・スコードロンではないか。
電池はすでに作っている会社と契約はできているそうだ。機体ができていないのに動力の契約が済んでいるというから驚く。やる気満々。
ULGは新しいカテゴリーである。抵抗勢力が目に浮かぶようで、認知させるのにはかなりの苦労を覚悟する必要がある。しかしガネットMGはULPで通る。運航に制約がつくが、取り敢えずはULPで飛べるのがいい。頑張ってみるが、最低はULPでも飛べるのだ。

夢の続き

 諦めた夢にも続きがあった。明け方の夢はいよいよ浅き夢である。しかし再び夢が見られる。この世の中、捨てたものではないではないか。詳細を知りたい人は・・・

AIRCRAFT OLYMPOS Ltd.

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