(3)グライダーとモーターグライダー

 グライダーにはクラブクラス、スタンダードクラス、15メートルクラス、オープンクラスという基本的な種類がある。最近はワールドクラスというのまでできた。
ワールドクラスとクラブクラスは滑空比が30前後、スタンダードは40くらいで15メートルクラスになると45にはなる。オープンクラスに至っては60+にもなるのだ。どうやら+というのは測定できませんということらしい。高度1メートルのロスで60メートルも行くのだ。降下角は1゜、少しでも空気が動けば計測誤差が無視できなくなる。ともかくやたらと効率がいい。
オープンクラスはまだマイナーだが、最近ハバを利かし、遂に日本にも姿を現した。オバケのようなグライダーで、翼の幅も25メートルくらいあるから、幅だけではボーイング737も目を剥く。ちょうどスペースシャトル・オービターの翼幅なのがおかしい。
グライダーは空ではとび抜け優雅で効率がいいのだが、ひとりで飛び上がることができない。誰かに引いて貰えなければ何もできない甚だ困った航空機である。自分で担ぎ、二本の足でさっさと走るハンググライダーの庶民性がない。貴族的と言えば貴族的だが、準禁治産者のようでもある。
飛びたいときに引いてくれる曳航機がいないと、のんびり待たなければならない。混雑したときなど、順番待ちで1時間もおしゃべりをしていることもある。グライダーは空では非常にスマートだが、地上ではお世辞にもスマートとは言えない。グライダーマンは貴族になったり労働者になったり忙しい。
これでは不便だとグライダーにエンジンを着け、人を頼らず自分で離陸できるようにしたのがモーターグライダーだ。英語ははっきりしていて、セルフ・ローンチ・セールプレーンと言っている。グライダーといわずセールプレーンがいい。ロマンチックだ。

 「機体のまわりで仲間と話し合う、それがグライダーのいいところ。自分で孤独にエンジンを掛け、ひとりで飛んで行くなど優雅じゃないね」とジュング氏が言えば、「そうだ、そうだ」と、今度はカーノ氏も意見が一致する。

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