研究室(8)雲底高度

 LCL 「良い日」の条件が「滑空気象シリーズ」のVol.1に書いてある。もちろん「良い日」がグライダーにとって飛べる日であるのはいうまでもなく、いきなり2ページ目にあるのだから特別チカラが入っていようというものだ。
さて条件はと読むと、イギリスでは通用するが、日本なら少し工夫して読み替えなければなるまいと思う所がある。いずれ研究しなおす必要があるだろう。
けれども研究を待つまでもなく、△印の付いた気になる箇所があった。『気温が上昇している間は、気温と露点温度の差が1℃ひらくごとに、対流性の雲底高度がおよそ400フィート上がる』という事項である。たとえば10℃の差があれば雲低は4,000フィートくらいになることである。ただし気温がいったん下がり始めると、この関係は失われる。
なぜ400フィートなのかは根拠がある。これはLCL(Lifting Condensation Level)が次の式で算定できるからだ。

雲底高度(LCL)≒125×(気温 - 露点) (m)

125mは410フィートであり、端数を切り捨てたから近似で400フィートなのである。したがって露点が分かれば雲底高度が推定できる勘定になる。
LCLは専門用語で「持上凝結高度」という。「Lifting Condensation Level」の直訳なのだが、地表の空気が暖められ、断熱上昇して凝結し雲になる高度のことである。普通のテレビ気象では気温はデータにあるが露点までは報じられない。ましてや朝、これから滑空場に行こうかと思っている時間に今日のLCLは知ることが困難だ。
しかし世の中よくしたもので、気温と湿度が分かれば露点を計算できる式がある。複雑だから計算はしない。インターネットが自動的に計算してくれるのだ。誰だか知らないが感謝していつも使わせてもらっている。念のために親切な人のURLを紹介しておこう。

出力サンプル

 毎週日曜日には朝6時に起きてLCLの計算をする。関宿にいちばん近い気象観測地点は越谷にある。ここが泣き所なのだが、気温と風はあっても湿度が無いのだ。LCLの計算ができないのである。湿度が通報されるいちばん近いところは東京と熊谷なのだ。悩む。あげく熊谷のほうが関宿の実態に近いだろうと熊谷にした。
そんなわけでLCLの予測は熊谷になってしまったが、まあ「当たらずといえど遠からず近からず」とみずから慰めている。
もちろん雲底高度がサーマルトップではないが、名人でなければ雲の縁を回って雲より高く飛ぼうとはしないだろう。したがって雲底高度を予測すればそれがサーマルトップの予測になる。と安直に考える。
ところが3月16日の日曜日、0600に計算したLCLは200mだった。気楽に200mと予測を出したら、次の日にクラブから報告されたサーマルトップは1,300mでひどく外れていた。
慌ててデータを見直したらこの日の湿度はどんどん下がって、露点はほぼ0℃と変わらなかった。気温が上がっただけサーマルが出来る。1100頃には気温と露点の差が10℃を越え、1500には最大になっていた。予測は1,400mである。これは単純に早朝に計算したLCLでは予測にならない。
どうしても「飛べる日」について考えねばならぬ。

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