研究室(2)風とトリガー

 雲は見上げる。けれども雲は上昇気流の結果です。結果よりは原因でしょう。原因を探すには下を見ましょう。地形を読むのです。ソアリングの本にはそんなこと書いてないのかもしれませんし、見上げるのが人生で、下を見るのはカッコワルイ。

上昇気流

  ものの本に上昇気流は斜面に風が吹いて駆け上るものと、太陽に暖められた空気が立ち上る泡だと書いてあります。斜面は山ですが、たまに前線であったりもします。残念ながら関宿には山がありませんし、前線をアテにしてもしかたがありません。
すれば関宿は泡だけが頼りです。泡は地面が均等に熱せられないことでできます。暖まり易いところが盛り上がって、冷えたところが泡をくびらせ押し上げるのです。
怪鳥が50kmを飛んだとき、最初に当たったサーマルは町でできたものでした。周りは農場で町よりは温度差があったのです。オソナエ餅の原理です。道路はナマコ餅かな。アナタはオソナエ餅作ったことありますか?
われわれが基盤としている関宿滑空場の周辺は水田ばかりです。水田はヒート・キャパシティが大きく、太陽の熱をドンドン吸ってしまいます。ですから関宿付近はサーマルができにくい。そう誰もが思っています。
しかしサーマルは温度差です。太陽が照れば温度差はできるはずです。地形がコマギレで大きなサーマルはできにくいでしょうが、キットできているはずです。

風とトリガー

 暖められた空気の泡が上に伸びます。周囲の冷たい空気が泡を押し上げますが未練があってまだ地面にくっついています。そこに風が吹いてきて、無情に泡を押し流すのです。まるで見えないアドバルーンです。風に吹かれて未練の綱はなびきます。
特殊な地形が行く手を阻み、泡は身動きできなくなります。その間にも太陽が照り、泡はドンドン立ち上ります。遂に未練もこれまでと、地面にオサラバ泡は空に浮き上がります。身軽な泡は虚空を目指す。人は呼んで上昇気流、トンビは呼んでサーマルです。
さてその泡が吹き寄せられる特殊な地形。トリガーなどとも呼ばれますが、それが読めたらステキです。伝家の宝刀、当たりクジ、思わずニタリの宝物。
タネを明かせば簡単です。冷気が作る土手があって、土手が風に凹なる地形、それがトリガーになるのです。
たとえば街があって、水田が街を囲んでいる。街はサーマルの熱源で、冷たい水田は見えない土手です。風が南風なら泡は街の北に押し付けられ、我慢の限界を越せば、泡はサーマルとなって立ち上る。凹になった水田の際がトリガーですし、泡は風に吹かれて北に流れます。

 土手は水田ばかりではありません。川もそうでしょうし森林もそうです。みんなで風向きに応じたトリガーを探しましょう。
夏、南風が卓越した時のトリガー、冬、北西風が卓越したときのトリガー、春先は東の風でしょうか。手分けすればドンドン情報は集まるのではないですか?
顕著なトリガーには発見者の名前をつけましょう。コンドー・トリガー。ムトー・チェムニーもいいなぁ。イケダ・ミサイルなんてのもあったりして。ヨシカワ・バンク、コモチャン・ストリート・・・・・・

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