研究室(7)サーマルの強さ

 話はまだ「滑空気象シリーズ」である。サーマルの平均上昇率は雲底高度もしくはブルーの場合にはそのトップと深い関係があるようである、と書いてある。
「ようである」とは断定ではない。なぜこが本の気に入ったかの由縁でもあるのだが、懸命に因果を探ろうとする心意気が良い。繰り返すが、どっかの国のグライダーのように思考を停止し、もっぱら筋肉の仕業とするのではなく、ちゃんとセオリーを追求するエンジニアリングになっているからだ。
さてサーマルの強さである。フランス人によって行われた研究によると、サーマルの強さをノットで表わした場合には次のような法則があることが解っている。

サーマルの強さ≒1.2×雲底高度(ft)の千の位の数字-1 (ノット)

これでいくと、雲底高度が2,000ftでは(1.2×2 - 1)でサーマルの強さは1.4ノット、同じく4,000ftでは3.8ノット、6,000ftで6.2ノットになる。ただし式は≒であって=ではない。ここで得られるサーマルの強さはあくまでも目安ということだ。これよりも強いときもあるし弱いときもある。それを忘れてはいけない。
ここで脱線するが、翻訳にはしつこいくらい何回もm/sはノットの半分だと書いてある。翻訳者とSATAの心優しさを感じずにはいられない。ノットは毎時1,852mである。時間は3,600秒だから秒速にすると(1852÷3600=0.51)約半分なのである。しかも昇降計にはノット表示とm/s表示のモノがあるからだ。
さて式は暗算用にはいいがパソコンで自動計算ができない。誤差の屋上屋を重ねるようで意味はないのだが、式を変えてとりあえず自動計算ができるようにした。

サーマルの強さ≒0.00394×雲底高度(m)-1 (ノット)

出てくる答えは数値が細かくなって何やら権威がありそうな雰囲気だが、アバウトなのは言うまでもない。数字を扱うときにはくれぐれも用心が大切だ。

           ~ 300m 0.2 ノット
       300m~ 600m 1.4 ノット
       600m~ 900m 2.6 ノット
       900m~1200m 3.8 ノット
      1200m~1500m 5.0 ノット

 本には『平らな地表面上においては、高度1,000ft(300m)以下では殆どの場合リフトは弱く、2,000ft(600m)を超えるまではその強さは最高に達しない』とある。たぶんアイスクリーム・コーンの下部では混ざり合いがあってそうなるのだろう。
『サーマルが積雲に連続している場合には、雲底に近くなるにつれリフトは強くなるが、積雲の背が低く平べったいときリフトは雲底の近くで急速に弱くなる』とある。リフトの方向が変わるからだろう。
いずれにしても式では雲底高度が判っている前提がミソだ。だが未熟者、下から眺めて雲底高度が判れば苦労はない。サーマルの強さはアバウトだからと言って、雲底の判定もアバウトで良いという理屈には成らぬ。どうしても雲底高度が予測できなければならぬではないか。
次はどうしても雲底高度を推定する方式を探さなければならぬ

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