研究室(11)風の路地(サーマル・スワース)

 8月24日、計算によるサーマルトップは12時に1,100m、14時が1,300mであった。気圧配置は高気圧の後面で等圧線はほぼ横に寝ている。高気圧の中心からすれば270度ということになる。
この気圧配置では、たぶん実際のサーマルトップは計算以下だろうと思われた。だが、どのくらいになるのかは分からない。勘では75%。12時に800m、14時に1,000mというところだ。
張替さんのレポートによると、13時に離陸し獲得できた高度は950mだったそうである。そうすると実際は計算の86%~73%ということになる。予測が当たったというべきか、当たらなかったというべきか、微妙な数値だ。(だから怪鳥!)
さてここからが問題だ。研究の本題に入ることになる。
張替さんのレポートではゴルフ場で離脱、トステム上空で旋回したが300mになったのでダウンウインドに入った。そこで+1のサーマルをヒット、旋回して950mを獲得した。飛行時間は40分。
気になったのはダウンウインドで遭遇したサーマルである。13時の越谷の風は東1m、14時に東北東2mであった。風の小路(サーマル・スワース)はダウンウインドから東もしくは東北東の方向に伸びていたはずだ。
地図でサーマル源とおぼしき場所を探してみる。ダウンウインドのどの辺りか分からないので、中間として東北東に線を描いてみた。利根川の向こうに岩井の街がある。甚だ匂う。サーマル源としては申し分がない。
さてサーマル源を岩井市街地とすると、トリガーは何処だろう。街の西側には細い川が流れ、ここが気流の土手になっているだろう。サーマルは川に沿って風に流される。
街の南には大きなゴルフ場がある。ここも気流の土手になっているだろう。そうするとサーマルは川とゴルフ場の間を通って利根川にぶつかり大地を離れる。トリガーはその辺りにあるに違いない。
推論の通りとすると、東もしくは東北東の風でサーマルはダウンウインドを横切る勘定になる。張替さんがどう操縦し対処したのか分からないが、40分も飛べたというのは連続して流れてくるサーマルを上手く拾えたからだと思う。14時に離陸した機体は20分で降りてきているから、差はどうして生まれたのか知る必要もあるだろう。
サーマルトップで機首をダウンウインドと岩井を結ぶ線に向け、意図してトリガーを見つけたのだとしたら、クラブは新しいステップを踏んだことになる。もしそうだったら凄いことなんだけれど。
もちろん推論が違って、サーマル源は岩井ではなく、トリガーも違うところかもしれない。でもサーマル・スワース(風の路地)を探すことはスリルに満ちた知的な遊戯だ。
朝の時点でサーマルトップを数値計算できる。それをどう活用するかは気圧配置で見当をつけ、トリガーを探すには乗って飛ばなければ分からない。
サーマル・スワースを予測するには風のデータが要る。朝の予測では風まで読めない。実況をとる手段が必要だ。

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